晩春/秋刀魚の味 @早稲田松竹
今年の映画初めは、論文提出を2週間後に控えて、一人で体調崩した状態で年越ししたり、ハードディスクぶっこわしたりで本当にもうさんざんだったときに、ええい!ままよ!と勢いで見に行ってしまった小津だった。別に、映画はスクリーンじゃなきゃ、などというつもりは毛頭ないのだけれど、せっかく、小津をスクリーンで見せてくれるというなら、まったくもってやぶさかではないのである。
以下、箇条書きで印象その他備忘メモ。
- 晩春
- 原節子の鼻にかかった「ただいま」が妙にセクシー。
- にっこり笑って、「おじさま、不潔よ」と小首をかしげる原節子には参った。あれ、習得したい。
- 方角について、なんのかんのと言ったあとで、「そうかい。昔からかい。」とまるで落語のような「オチ」をつけるおじさん。こういうところから、私のような「遅れてきた」世代は、小津安二郎という監督が「巨匠」である以前にふつうに「人気」のある人だった(だろうな)ということを知るのです。わりと年齢層高めの館内が「くすくす」ではない笑いに包まれていた。
- その一方で、ときどき、よくわからないカットも挟まれる。よくわからないから忘れてしまうけど。小津論がさかんなのがわかる気がする。
- しかし、旅先だからって、父と娘が2人だけで枕をならべて寝るのは、緊張感があるというか・・・。無意味にどぎまぎしてしまった。
- 終わった後、笠智衆が父親だったら、そりゃあお嫁に行けないだろう。と同行者に漏らしたら、おじさん好きだもんね、の一言でかえされた。上で書いたようなことを思うのも、私が父親世代を恋愛対象にできるからか。あぶない。
- 秋刀魚の味
- 岩下志麻はもちろんだが、兄嫁・岡田茉莉子の壮絶な美しさ。
- 岩下志麻の「こんちは」「さよなら」という挨拶が軽くってすてき。習得したい。
- 団地の隣人に「トマト、2つ借りるわよ」という超絶なまでに斬新なセンス。かりるのか。かえすのか。トマトをか。
- 笠智衆の「みちこー、シャボンないよー」はとても良いセリフだと思ったけれど、同時に今見ると、昭和の父親ってほんとうにああだったのか、と思う。晩春でもタオルか何かを娘に出してもらっていた。「父親の威厳」とかそういうことではなく、むしろそれはかけらもなくて、面白い。それとも、「威厳」とか、亭主関白とかって、そういうことなのか。どんなに些細なことでも自分ではしない、のがステイタスだった時代か。
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